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《東田伝》東郭先生とオオカミ

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<この歴史館へGO! 歴史のブログ>

 東郭先生とオオカミ

 ある日、東郭先生はロバに乗って、本のつまった袋を背負い、就職のため“中山国”という地に向かっっていたが、不意に傷を負った一匹のオオカミが彼の前に現れ、「旦那さま、わたしは猟師に追われていおり、猟師の矢にうたれ死にかけています。わたしを救うため貴方のその袋に入れては頂けないでしょうか。このご恩は将来必ずやお返しします」と願い出た。もちろんオオカミは人間に害を加える動物であることを東郭先生も知っている。しかし目の前にいるこの傷を負ったオオカミを可哀相に思い、少し考えてから「それでは猟師を怒らせてしまうでしょう。しかしお前がわたしに願い出たからには、必ず助けてあげよう」と答え、彼はオオカミに体を小さくさせて縄で縛り、本の入った袋に入れた。 

 まもなくオオカミを見失った猟師がやってきて、「オオカミを見なかったかい?どこに逃げたんだろう?」と東郭さんに聞く。「見ませんでしたよ。この付近には分かれ道が多いから、オオカミはほかの道で逃げたかもしれません」と東郭さんがこれに答えた。猟師はその言葉を信用してしまい、ほかの方向へと追っていった。こちら袋に入っていた狼は猟師の遠ざかる足音を確認し、「お願いします、わたしを外に出して、逃がしてくださいまし」と再び願った。心のやさしい東郭先生は狼の言葉に惑わされ、狼を袋から外に出してやった。ところが、狼は外に出るなり「旦那さまは善事をしてわたしの命を助けて下さった。いま、わたしは非常におなかを空かしているので、もう一度善事をしてあなたを食べさせてくださいな」と東郭先生に吼えて襲いかかった。 

 東郭先生は狼と戦いながら、「恩を仇で返すなんて!」と叫び続けた。このとき、鋤を持った一人の農民が通りかかったので、東郭先生はその農民を引きとめ、自分が狼を助けたが、オオカミは恩を仇で返し、自分を食べようとした経過を話した。だがオオカミは東郭先生が自分の命を助けたことを一切否定した。しばらく考え込んでいた農民は「貴方たちの言葉は、とちらも信じられません。こんな小さな袋にこの大きな狼が入るとは思えない。この目で確かめたいので、もう一度やって見せてください」と言い出した。これに狼は同意し、またさっきと同じく横になり、体を縮め、またも東郭先生に縄で縛らせ、もう一度袋に入ったとたんに、農民は袋の口も堅く縛り、「このようなケモノは自分の本性を変えることはない、貴方は狼に慈悲を施すなんて、バカなことをしたね」と東郭先生にいい、鋤を振り下ろして狼を殴り殺してしまった。ここでやっと気付いた東郭先生は、自分の命を助けてくれた農民に心から感謝した。

 

十三世紀の明代の馬中錫が著した《東田伝》の話である。“東郭先生”と“中山のオオカミ”とも呼ばれている。中国では、無意味な同情心から恩を仇で返されるお人好しを無知な人としている。善悪の判断もできない人ということだ。

孔子の国である中国では、道徳が欠落した民族を多く、それゆえに“徳”を強く説いたのであろう。しかし、それも形骸化されて、身分差別を固定化される朱子学へと形を変えてゆく。朱子学そのものは立派なのだが、結局は人がどう扱うかで変わってしまう。

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