トリチウムって、本当に安全なの?
トリチウムは三重水素と呼ばれ、大気中のトリチウムに水蒸気 (HTO)、水素 (HT) および炭化水素 (CH3T) の3つの化学形で存在している。
大気中の自然界に多くは存在しないが現存する自然物質である。
最近、よく問題にされているのは水素の同位体の1つである放射性同位体、放射性トリチウムのことである。
半減期 12.3年
非常に低いエネルギーのベータ線を放出して、ヘリウム-3(3He)となる。
大気中の窒素・酸素と宇宙線の反応で生成し、地球上の天然でつくられたトリチウムの存在量は96京ベクレル (9.6×1017Bq) と推定されている。降雨中にも濃度0.2~1ベクレル/リットルであったらしい。
つまり、原子炉のあるなしに関わらず、現存する物質と言う訳だ。
但し、核兵器爆発実権後の現在では、降雨中の濃度は1~3ベクレル/リットルと上がっている。また、原子炉発電所や再処理工場では、回収されることなく大気中、あるいは河川に放出されて続けている。
【アメリカが実施した水爆実験】
1954年3月1日にビキニ環礁でアメリカが実施した水爆実験で、2.0京ベクレル (2.0×1016Bq)以上が大気中に放出された。
頻繁におこなわれた大気圏内核実験の影響で、1960年代半ばの降雨中の濃度は100ベクレル/リットルになっていた。
昭和35~44年の子供達は、そんな放射能を大量に含んだ雨を浴びて生活していた訳になる。
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<降水あたり河川のトリチウム濃度>
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<東京・千葉の月間降水トリチウム濃度>
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<トリチウムの化学形別及び年齢別の線量係数>
〔HTOの線量係数は、経口と吸入摂取が同じでCs-134,137の1,000分の1のレベル、植物等の組織と結合した有機結合型トリチウム(OBT)の線量係数はHTOの約2.3倍、トリチウムガス:HTの線量係数はHTOの一万分の1で、いずれも他の核種に比べて非常に小さく人体影響は少ない(とICRPは判断している)。 〕
広島原爆の被災者の中に、何もする気が起きなくなる原爆ぶらぶら病(げんばくぶらぶらびょう)という障害がある。
広島原爆投下時に宇品港の近くにいた岸本久三の言葉に「私もこの原因不明の病気にやられてから仕事もすっかりやめ、毎日家にごろごろしているんですが、近所の人たちから“なまけ者”と言われているような気がして」、主として、放射能威力による内臓-骨髄、肝、腎、内分泌臓器、生殖腺等―の障害に基く機能不全、乃至機能変歪によるもので、その結果として生活予備力が不足することに基づくものであろうと考えられているが、良く判っていない。
統合失調症、うつ病、無気力病など現代病と言われいる病気が、この時期の放射能と関連がないと誰が断言できるだろう。
研究すらされていないので、肯定も否定もできないのが現状なのである。
【世界各国の原発からの海洋放出の実態】
原子炉内では、リチウムのような軽い元素と中性子の反応および三体核分裂によってトリチウムが生じる。
電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、加圧水型軽水炉内には約200兆ベクレル(2×1014Bq)、沸騰水型軽水炉では約20兆ベクレル(2×1013Bq)が蓄積される。
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<世界の原子力発電所の海洋廃棄トリチウム量>
〔英国が多く2500兆(2.5×1015)Bq/年程度、日本は400兆(4×1014)Bq/年程度〕
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<日本の各原発からの海洋廃棄トリチウム量>
・加圧水型では最大が玄海の82兆(8.2×1013)Bq/年 (2010,2011年度)
・沸騰水型では最大が事故前の福島第一の1.5兆(1.5×1012)Bq/年(2010,2011年度)
全原発の合計では年間で380兆(3.8×1014)Bq/年
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<再処理工場からの放出分類>
・英国セラフィールド施設からは1998~2002年の年平均値で2600兆(2.6×1015)Bq/年が海洋に放出されている。
・フランスのラ・アーグ再処理工場からの放出量の実績値(2003年)は、トリチウム水が1.2京(1.2×1016)Bq/年、トリチウムガスが67兆(1.9×1013Bq)Bq/年である。
・六ヶ所村(実績ではなし)保安規定に定められた基準値で、年間800トンの使用済核燃料を処理すると、トリチウム水が 1.8京(1.8×1016)Bq/年、トリチウムガスが1,900兆(1.9×1015Bq)Bq/年になる予定である。
放出すされるベータ線は水中で0.0mmまでしか届かない為に、ほとんど影響を心配されることはない。
問題は内部被ばくである。
体内取り込んだトリチウム水が10,000Bqであった場合、実効線量は0.00018mSvになる。
同じく、10,000Bqを含む水素ガスを吸入した時の実効線量は0.000000018mSvになる。
雨水中のトリチウム濃度を2Bq/ℓとして、この水を1年間摂取すると実効線量は約0.00004mSvになる。
これを見る限り、現在の濃度なら人体の影響は考えられない。
電気出力100万kWの核融合炉を1年間運転するには、130㎏(4,700京Bq、4.7×1019Bq)のトリチウム水が発生する。
尤も原発で生ずる1ℓ当たり36京Bqのトリチウム水を飲むようなことがあれば、確実にあの世に行けそうだ。
東京電力福島第1原発から高濃度の放射性物質を含む汚染水が海へ流出している問題で、平成23年5月から流出し続けたと仮定した場合、海へ流れ出た汚染水に含まれるトリチウム濃度が推計で最大約40兆ベクレルに上るとの試算を発表している。(2013.8.2)
東京電力の言うことを信じていないが、年間で380兆(3.8×1014)Bq/年に比べると40兆Bqが大した量でないことは判って貰える。
何度も言っているが、安全と安心は別もである。
福島第一から漏れ出した汚染水は現在の所、安全と思われる量に留まっていると推測される。
地下に漏れ出した放射能物質が地層によってある程度の濾過効果があった為だと推測されるが、データーが正しいとは断言できないので実際のところはよく判らない。
それに、これはトリチウム水に限っての話である。
日本にはトリチウム水の基準が存在しないが、
カナダ:7,000 Bq/L
米国:740 Bq/L
EU:100 Bq/L
となっている。安全に対して非常に緩い国であることは疑いようもない。
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<自然起源のトリチウムによる内部被ばく量、摂取量>
〔人体中には50Bqのトリチウムが存在し、自然放射線による日本人の平均被ばく量2.1mSv/年の内訳に、かろうじて現れています。〕
さて、放射性トリチウムの濃度が上がることで、人体にどのような影響が現われるのだろうか?
地上に放射能物質が増えてゆくことで、単純な足し算では巧く説明できないことが起こると推測される。
それは遅効性の毒の為に特定するのは難しい。
世界でやっていることだから、無闇に海に流せばいいなんて言ってはいけない。
願わば、取り込んで100年ほど寝かせて置くのが安全と安心を両立できる。経済的かどうかは研究結果がでるまで保留したい。
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トリチウムはDNAの水素結合部分に入り込むとことで、原子崩壊によるDNAの直接破壊も問題となります。
投稿: | 2014年1月21日 (火) 00時02分
こんにちは、名無しさん
トリチウムは体内に取り込まれますが、その濃度が問題です。
私もシュートシュートで、高濃度トリチウム殺人を書いていますが、再生工場から生まれる原液と呼ばれるような高濃度のトリチウムでもなければ、人体に影響する前に排出されてしまいます。
ですから、福島第一の地下から出ている高濃度でないトリチウムを飲んだからと言って、『直ちに』健康被害を心配する必要はありません。
が……
だからと言って、現在の放置・排出するのがいいことだとも思いません。
影響がないのは見た目判らないだけであり、本当のところは判ったものではありません。
投稿: (管理人)donnat | 2014年1月31日 (金) 10時30分