ポトマック河畔にさくらさく
<桜咲く3部>
さくらさく この花の起源
さくらさく 桜文化と桜の伝搬
ポトマック河畔にさくらさく
桜と言えば、ソメイヨシノだ。
ソメイヨシノは、江戸末期に江戸の染井村に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成された。明治初期に樹齢100年を達するソメイヨシが確認されていた記録から1720~1735年ごろに人工交配されたのでないだろうか。
吉野に咲くヤマザクラ「吉野桜」と混同しない為に「染井吉野」と命名したという。天気予報の開花宣言でお馴染みとなったソメイヨシノは、日本を象徴する桜と言っても過言ではないだろう。
そんな日本の桜が、ワシントンDCのポトマック河畔でも満開らしい。
(植樹から100周年を迎えたワシントンの桜 AFP=時事)より
<困ったちゃんの起源説>
植物分類学の小泉源一博士が、1939年に韓国の済州島に自生する王桜とソメイヨシノを比較し、同一種として済州島を発祥地とする説を唱えた。
2012年には、ワシントンDCのポトマック河畔に植えられた桜の『日米桜寄贈100周年』も執り行われた。この桜は尾崎行雄東京市長をはじめとする多くの方の尽力により実現したもので約3,000本の桜が贈られ咲き誇っている。それは日露戦争を講和に導いてくれたアメリカの恩義に報いようとした日米の友好証なのだ。
大正8年(1919年) 61歳になった尾崎が外遊の際
「異国(とつくに)の春の光を添へなんと
寄せし桜の花 この日咲く」
と再会した桜に贈っている。
しかし、この桜には、困った謂れがある。
『ワシントンの正直桜の話』
アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンは
子供の頃、お父さんが大切にしていた桜の木を
切り倒してしまいました。
「これは誰がしたのだ。」とお父さんが尋ねたので、
「私が切り倒しました。」と正直に答えました。
お父さんはワシントンの正直な事を喜びました。
これは、伝記作家のパーソン・ウィームズがジョージ・ワシントンの死後に子供向けに書いたThe Life of Washington (1800)の中で書いた作り話で、
褒めた本当の理由は「正直に答えたからではなく、そのときジョージ・ワシントンはまだ手に斧を持っていたからだ」、というオチである。
M・ハーシュ・ゴールドバーク( M..Hirsh Goldberg)著 「世界ウソ読本 The BookOfLies」によると、パーソン・ウィームズは、出版社に「ワシントン伝記」で一儲けしようと持ちかけてワシントンの逸話を集めて出版されたそうだが、ワシントンが正直であることを伝える為につかれた嘘の話だった訳だ。
しかし、奇妙なことにこの桜の話には尾びれ付き、アメリカの弁護士会の仲間内で「ワシントンの父は切り倒された桜のDNAと斧についていた桜の切りくずのDNAテストを事前に調べていたことを知っていたので、正直に答えざるを得なかったというのだ!まあ、DNAテストは確かに今や絶対的証拠に近い。」などと語られたらしい。
つまらない、アメリカンジョークなのだが、信じる馬鹿が本当にいたのだ。
それは、この桜のDNAテストの結果で、この桜のDNAは韓国の済州島で天然記念物に指定されている美しい王桜のDNAと一致しているからだという。
はっきり言わせて貰おう。
これはまったくの嘘である。
そもそも寄贈された桜は、ソメイヨシノの1種でない。明治45年(1912年)に贈られた桜は染井吉野ほか12種類3000本の苗木である。(ソメイヨシノが1800本、関山桜350本、一葉桜160本等の12種類、そのうち御衣黄桜20本は全てホワイトハウスの庭に植えられたと詳しく記録している。)
ソメイヨシノが最も多く寄贈されているのでそこに目が向いてしまうが、そもそも1種類でないことも判っていないことが問題である。
さらに、米国農務省がDNA鑑定を行い、ソメイヨシノと王桜は別種であると2007年6月に結論しているので疑う余地もない。この分析を行ったのは、すべて韓国系か中国系の研究者であるというのだから信憑性はより高い。
それでも韓国系の方は、ソメイヨシノが王桜だと信じている。
2009年4月6日に聯合ニュースが記事に、韓国国立山林科学院暖帯山林研究所のキム・チャンス博士がDNA分析を行ったところ、「ポトマック川で採取した桜と王桜は同じDNAを持ち、日帝強制支配期に日本人が済州島の王桜を改良・増殖して、それをワシントンDCに送ったものだ。」という論文を掲載した。
そもそも、採取した桜がソメイヨシノと限らない。さらに「改良・増殖」と書かれているので完全に一致したのではなく、一部が一致したのであろう。
ソメイヨシノと王桜が別種の桜であることは判っているので、おそらくソメイヨシノ以外の桜を採取し、一部が一致したと言っているのだろう。
そして、アメリカ人や多くの外国人がその桜を褒めれば褒めるほど、桜祭りが盛大になってゆくほど、それを根拠に「ワシントンDCのポトマック河畔に植えられた桜は、韓国産の桜だ」と今もロビー活動を続けている。
12種類の桜を寄贈したのは紛れもない日本人であり、日米の友好証に飛んでもない横やりを入れられた訳だ。
美しい桜は、日本の象徴とされて贈られることが多い。
桜を送るというとスポンサーも付きやすいらしいので、それを『桜外交』と言ってもいい。
しかし、桜はどこに植えても咲く花ではない。
況して、ソメイヨシノは病気に弱い。
植えても咲くとは限らない。桜が綺麗に咲くように、枯れないように、そんな桜達を影で支えるのが、造園家達である。
そんな造園家達にとって、「ポトマックは桜の海外植樹の聖地」であるらしい。寿命が約60年の桜が100年以上も枯れずに満開に咲き誇るのは奇跡のようだ。さらに、幹にカビが繁殖し、樹洞(ムロ)が出来ると桜の木は自重で倒れにくくなり、『姥桜(うばさくら)』へと変わってゆく。すると百年、千年と寿命が延びてゆくそうだ。
日米の友好証が千年と延びてゆくことを祈りたいものだ。
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“桜外交”を支える造園家の苦労――ポトマック河畔の桜が100周年
http://www.fsight.jp/11301
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日米桜寄贈100周年
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sakura100.html
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