高浜原発1号基、原子炉の圧力容器のもろさ 小出裕章の説明はいつもちょっと意地悪だ!
高浜原発1号基の原子力圧力容器が「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」(2009年時点)が95度となり、玄海の98度に次いで非常に脆い状態になっていることが発表された。
たね蒔きジャーナルで小出裕章先生は、ガラスのコップを例にあげて高浜原発の危険性を強調しているのだが、説明がいつもながら意地悪だ。
ガラスと言っても、薄いガラスから厚いガラス、強化ガラスと様々であり、鋼鉄の圧力容器の厚さは15~30cmと様々である。
高浜原発の厚さは20cmである。
叩いたくらいで割れるガラスのコップと比較するのは、さながら遺憾な話だ。
脆性遷移劣化は酷い状態ではあるが強度に問題がある訳でもなく、運転上の問題は何もない。
仮に地震などで緊急停止が掛かった場合であっても、通常の冷却システムで冷温停止にもってゆくなら、脆性遷移温度はあまり関係ない。
しかし、それはあくまで想定内の場合だ。
もし、原子炉の設計温度(耐久できる最大温度)302度から非常用炉心冷却装置を作動させるような状態になった場合、この「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」が問題になっている。
今回の福島第一原発の2号基のように、地震で配管に破損が生じて、通常の冷却が行えない状態になった場合、原子炉を冷却する為に非常用炉心冷却装置を作動させる必要に迫られた場合、302度から100度以下に一気に冷却が行われる。
原子炉の鋼鉄が急激に収縮し、一気に破壊する可能性があるのだ。
熱いお湯に付けていたガラスのコップに、氷水を注ぐようなものである。
高浜原発では、「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」95度ということだから、非常用炉心冷却装置を作動させる事態になった時点で危険性を加味する必要がある。
小出裕章先生の説明のように、叩いただけで割れるということはありえないのだが、非常用炉心冷却装置を作動させるような事態になった場合、2分の1くらいの確率でメルトダウン(メルトスルー)へと至る可能性があるということだ。
もう一度言っておこう。
高浜原発1号機の原子力圧力容器が「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」(2009年時点)が95度と脆くなっているが、
普通の地震などで緊急停止した程度では高浜原発の1号基が壊れる可能性は少ない。
しかし、地震の規模によって、あるいは運悪く、
原子力発電所内で重大なトラブルが起こり(たとえば、配管破断など)、非常用炉心冷却装置を作動させるような事態になった場合は、メルトダウン(メルトスルー)へと至る可能性がある。
小出裕章先生もそのことをよく承知のハズなのが、勘違いされるようなたとえをいうのは悪い癖だ。
もっとも
危険なことには変わりないので、止めておく方がいいと思っているのは同じなのだ。
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20120425 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
http://www.youtube.com/watch?v=vmQEe3PFucg
・原子炉の圧力容器のもろさについて。
・農林水産省がスーパーや食品メーカー、外食産業など、270の業界団体に対し、国の設けた基準値を守るよう求める通知
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高浜原発1号機、劣化か 圧力容器もろくなっている恐れ
2012年4月21日7時23分
関西電力高浜原発1号機(福井県)で、高いほど劣化が進んだことを示す原子炉圧力容器の「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」(2009年時点)が95度となり、国内では九州電力玄海1号機の98度(同)に次いで高いことが、関電が20日に大阪府市に提出した資料で示された。原発の老朽化問題が改めて論議を呼びそうだ。
圧力容器は、原発の運転にともなって出る中性子を浴び続けると次第にもろくなり、トラブルなどで急激に冷やすと割れる恐れがある。金属の粘りがなくなる境目の温度が脆性遷移温度。温度変化を正確に予測するのが難しく、電力会社は運転開始時に圧力容器に同じ材質の試験片を入れ、数~十数年で取り出して調べている。
高浜1号機は1974年に運転を開始、試験片の測定は今回で4回目で、前回の02年に取り出したときの68度から27度も上昇した。
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