一%の経済理論
円高容認、原発推進、放射能安全、TTP推進、社会福祉削減、消費増税賛成という不逞の輩がいる。
「盗人にも3分の利」というようになるほど彼らの言い分も真っ当な意見であることが判った。
つまり、富を持つ者と持たざる者の見解の相違である。
富を持つ者にとって、現在の日本経済は決して悲観的な状態ではなく、むしろ好意的な状況であると考えられる。
その象徴的現象が円の価値の増加である。
円高とは、円の価値が上がることであり、1000億円の富持つものは何もせずに資産を増やすことができる好ましい状況なのだ。
1ドル100円のレートが80円になると、
10億ドル(=1000億円)⇒12.5億ドル(=1000億円)
2.5億ドルの資産が増加する。
国内では同じ価値だと思われるかもしれないがそうではない。仕入れ価格が減少すれば、物品価格も下降する。安く物が買える訳である。
“円高は、正に『金の卵』である。
円高を円安にもって逝く政策などもっての他だ。
円を発行?
借金を増やす?
国力を切り売りするような政策を訴えるなどもっての他だ。”
これが富を持つ方の考え方である。
米国の各都市で「1%の富裕層が99%の貧困層の富を不当に搾取している。」とデモが繰り返されたが、その1%の富裕層の考え方と言っていいだろう。
《 1000兆円の借金は怖くない 》
リフレーションと言って、マクロ経済政策の1つにインフレターゲット政策(物価上昇率に対して一定の目標を中央銀行が定めるものがある。
これを行なえば、デフレから脱却できるというほど簡単なものではない。
一時的に流出した金銭は一時的に経済を後押しするが実態経済がついてこない限り、供給を停止した時点で失速する。
ゆえに、お金を単純に刷れば良いとか、借金を増やしても国内の銀行を経由して、国民から借金をしているようなものだから破綻しないという理論も無茶な話である。
お金というものは形を変えた信用であり、信用があると上がり、信用が無くなると下がってしまう。ゆえに、無尽蔵にお札を刷ることも、借金を重ねることもやってはいけない。
人間としての信用、私はこれを『徳』と呼ぶが、国家にも『徳』が必要だと思う。
しかし、円が上がり過ぎているなら、お札を増刷しても問題はない。
借金も同じである。
我が店は小さな酒屋で借金はほとんどない。
トヨタという会社は大きな会社で日本一の有利子負債をもっており、その額は10兆円を越える。
“借金無し”と“10兆円の借金”
どちらが信用力をもっているのだろう。
誰もがトヨタと答えると思う。
そう、『借金=信用力』の表われである。
日本の借金が1000兆円を超えようとも、長期国債の金利が上がらない限り、1000兆円の借金は日本の信用力の内側にあり、取り立て慌てる必要などないのである。
1%の裕福層の方々が、取り分けて危機感を持たないのはそう言う意味が判っているからだ。
財務省が言う。
『このままでは、日本が破綻する。』
という理由は始めから破綻しているのである。
もう一度言おう。
1000兆円の借金は、日本の信用力を越えていない。
日本の信用を落とさなければ、日本が破綻することはない。
《 価値観の違いが結論を変えている 》
高橋洋一氏や三橋貴明氏はマクロ経済を主張し、公共事業や増刷を行なうことを説いている。
池田信夫氏は、高橋洋一氏や三橋貴明氏のいうリフレ派は終わっていると言い、インフレターゲットを日銀が行なえば、長期国債の金利が上がり、評価損を起こすと忠告し、誹謗中傷を続けている。
因みに、インフレ率1%で長期国債の金利も1%上昇すると、確かに1000兆円の国債金利で10兆円の金利を政府は支払わなくてはならない。しかし、同時にインフレで物流コストが上がり、税収も10~20兆円ほど増加が見込まれる。
どちらが損で、どちらが得になるかというのは微妙な問題であり、始めから考慮するほどの価値はない。評価損を起こすという忠告は、まったく検討違いである。
では、何故、こうも意見が食い違ってしまうのだろうか?
それは立場が違うからである。
現在、収入が安定して高額の給与や蓄えを有している人々にとって、デフレは都合のいい環境である。デフレのままで経済が成長することを望んでいる。
一方、インフレを主張する人々は、国家が疲弊し、国民が総所得が減ることを憂いて、経済全体が浮上することを望んでいる。
どちらも経済の成長を望んでいるように見えるが、国家観がまったく異なっている。
〔デフレを容認する派〕
こちらは世界全体で経済が成長することを主眼においており、デフレで強い円である方が都合良いのである。
たとえば、世界展開をしている企業の株を買うにしても、会社が外国の企業を買収するとしても円が高い方が有利に働く。日本の企業が海外に工業を移し、安く高品質の物品を外国に売ることで儲けることができる。
円高は海外で中心に考えると、初期資金が大きいことが有利に働くのでデフレが続くことを望むのも当然なのだ。
それゆえに増刷による円の急落も借金増加による財政破綻も望んでいない。
TPPなどによる開放経済によって企業展開の活性化と躍進を期待しており、その際に生じる物流から税収を得ることで財政の健全化を説いている。
〔インフレを希望する派〕
こちらは国内経済の立て直しを主眼においている。国内需要を増加し、内需産業を活性化させることにより、国民全体の底上げが重要になってくる。
政府による大型の財政支出を念頭においており、雇用の安定・衣食住の供給を提供することで国内経済を活性化させ、税の自然増収によって財政健全化を目指している。
国内を中心に考えているので、円高・円安は大きな要因にならない。
大型の財政支出によって円の価値が下がったとしても、海外輸出産業が活性化の手段と考えている。また、国内産業が好転すれば、株価なども上がり、国際価値の上昇で円高に振り返すことも長期的には考えられる。
政策的に円の価値が上下するので、政治的手腕・経済的手腕が試されることになり、成功すれば巨万の富を得るが、失敗すると財政破綻を促進することになる。
双方の考え方の違いは立場の違いであり、価値観の相違でしかない。
前者は、安全に日本経済を好転させることを望み。
後者は、日本国民の全体の経済好転を望んでいる。
前者は、富を持つ者にとってローリスクな社会であり、国家という概念はない。
後者は、富を持つ者にとってハイリスクハイリターンな社会であり、日本国または日本国民という概念を持って運営される。この世界を望むかどうかは経営者の才覚が問われることになる。
因みに、99%の民から見ると、
前者は、弱肉強食の社会であり、99%から脱出できない民は苦渋を強いられる社会である。
後者は、全体で浮上するか、全体で沈下する社会である。成功するのも失敗するものみんな一緒という感じだ。
例えるなら、
前者は、世界中に株を分散して買い。リスクを減らすことができるが、資産がなければそんなことは誰にでもできることではない。
後者は、同じ会社の株を持ち合い。株価が上がると時価総額で全体が金持ちになるが、株価が急落をすると全員が損をするというようなものだ。
意見が対立するのは判るが、デフレ容認派の的外れな説明や誹謗中傷は看過できない。
※ デフレを容認する派は、デフレが好ましいと言っている訳ではないが、マクロ経済のインフレを否定することからデフレ派と呼ぶことにする。
※ リフレーションと言って、マクロ経済政策の1つにインフレターゲット政策などを主張する者をリフレ派と呼んでいるので、私もそう呼ばせて頂く。
《 実物経済の需給バランス 》
デフレ派、リフレ派の双方が主張することは、意見や価値観が違うので政策や対応が異なるのは致し方ない。
しかし、デフレ派、リフレ派の双方が、実物経済の需給バランスを改善し、潜在成長率を上げることが必要であるということを主張していることは忘れないでほしい。
デフレ派は、リフレ派が通貨等の供給のみで経済が活性化するなどと言っている訳ではない。潜在成長率を上げることも主張している。しかし、あたかもそれを言っていないような口ぶりで非難するのは検討違いである。
何度も言うが、どちらが正しい選択かという問題ではない。立場と価値観の相違でしかない。
デフレ派が言う。
消費増税やTPPによる経済政策しか選択がないというのは真っ赤な嘘である。
放射能は人体に影響がないと言うのも嘘である。
原子力を継続しないと経済が持たないというのも嘘である。
リフレ派が終わっているというのも嘘である。
さて、双方が主張する潜在成長率を考えてみたい。
潜在成長率とは、「資本」「生産性」「労働力」という生産活動に必要な3つの要素をフルに利用した場合に達成される、仮想上の成長率をいう。生産活動に必要な設備などの「資本」、労働力人口と労働時間から求められる「労働力」、技術進歩によって伸びる「生産性」の3つの伸び率の合算値が「潜在成長率」である。
何も難しく考える必要はない。
要するに、「働く場所」と「働く人」の双方が揃っているかどうかが、潜在成長率を満たしているかいないかと言うことだ。
つまり、デフレ派、リフレ派の双方が、「働く場所」と「働く人」が不足していると認めている訳である。
逆に言えば、働く場所を提供できる政策を如何に取るかが問題になってくる。
しかし、古来から産業の基礎は3つに限られている。
「食料」、「エネルギー」、「軍事」
である。
幸いというべきか、不幸にもというべきかは判らないが、農林産業と新エネルギー産業と防衛産業はまったく手付かずで残されている。
資本をこの3つに集中的に投じれば、十分な雇用を生み出す可能性が残されているのだ。
日本再生の鍵は、金融や福祉でなく。農林産業と新エネルギー産業と防衛産業に転換できるかどうかに掛かっている。
また、宇宙技術や医療技術やロボット工学など他にもまだまだ伸びしろが残っている産業も多いので、日本の潜在成長率の高さを考えれば、日本の将来を悲観的に考える必要もないと思われる。
※ 「軍事」とは、国を守る軍事力と民を守る警察力の双方を意味する。民の安全という意味だ。
《 一%の経済理論 》
企業も大きくなると複数の国家に跨がって営業することになり、関税障壁や法律の違い、慣習など複数の障害となる問題を抱えてくる。
それら問題となる障壁をすべて取り除いて、経済活動を優先できるようにしようというのが世界の支流であり、私はこれを『一%の経済理論』と呼ぶことにした。
名前の由来は、米国のデモである。
TPPや消費税の増加もその支流であり、その世界観そのものを反対している訳ではない。
リフレ派も鎖国を主張している訳ではない。むしろ自由経済を推進することを述べている。私もそうである。
しかし、『一%の経済理論』には、国家という枠をすべて外そうという狙いがあり、文化や価値観を統一しようという考え方には到底賛成できない。
・関税障壁なし
・言語障壁なし
・法律の障壁なし
こちらの言葉にすれば、反対を言うものはいないだろう。しかし、裏返せば
・国籍なし
・統一言語
・国家の消滅(法律の統一)
どうだろうか?
まるで世界国家を模索しているようではないか。
日本語がなくなる訳ではないが、学校の授業も試験も契約書も正式文書はすべて英語と言われて納得できるだろうか。
遠い未来の人類はどうか判らないが、現在の人類にはその精神状態には到達できていない。
日本の価値観を世界中に押しつける気もないが、英語の価値観を押しつけられたくもない。
そして、何よりも国家のエゴは個人のエゴを遙かに凌駕して残酷である。
他国の人民を奴隷のように扱っていても、慈悲などというものは存在しない。恐喝と強奪を繰り返している。
当然のことだが、米国なら日本をすべて米国のルールに乗っ取って差し替えを要求してくる。文化も文明も無視し、国民性や個人の権利を略奪してでも国益を優先してくる。
TPPやFTAという外交交渉はまさに銃弾が飛ばないだけの経済戦争である。
奪い奪われの無慈悲な戦いに、竹槍で重戦車に突っかかるような日本政府の外交交渉力では心許ない。
国籍も言語も国家も奪われかねない戦いなのである。
『一%の経済理論』を主張する方々は、経済的富を得る為ならそれを受け入れることができる方々だ。
丁度、「一億総中流」という言葉と対称的考え方である。
国民が等しく豊かになるのではなく。経済成長の過程で貧富の差が生まれるのは致し方ない。99%になりたくないなら、努力して1%にのし上がりなさいと考えている。
富のある者が努力して、さらに富を得る。
その考え方のどこが悪い。
経済活動の上で、障壁となるなら関税も言語も法律も無くせばいい。
決して、その考え方が悪いとは申しません。しかし、私とは相容れない考え方だ。
私は日本文化を愛していますし、日本語も好きです。
また、英語も好きですが、日本の会話を英語にしたいとは思いません。
「わび」、「さび」の心を捨てる気になりません。
当然、99%の奴隷国民を認める訳もないのです。
また、リフレ派に貧富の差が生まれないという訳ではありませんが、デフレ派のように始めから99%を認める考え方に賛同などできる訳もありません。
私はやはり「一億総中流」を目指したいです。
“国民すべてが豊かになる世界を目指して”
最後に、デフレ派は、国民を騙す過程でありえないデマを流して洗脳しようとしている。全く持って非人道的な行為ある。
正しい情報を提示して、選択を委ねるのが筋であり、政治家や官僚は公人であって、私人ではない。
個人の見解や価値観で国民の利益を一方的に決めるのは、言語道断な話である。
『1%の経済理論』と『一億総中流』など、どの選択を国民が選ぶかは、国民に問うべきものであり、公人が勝手に決めていいものではない。
※ 『1%の経済理論』:経済優先主義で努力した者(一族・会社・団体)がより富を得る社会
PS.ユダヤ人は国家を消失した為に、ユダヤ人として自らを守る為にも国境を越えた活動を行ない。『1%の経済理論』を率先してきた民族とも言える。
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