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朗報なんかじゃない。「甲状腺疾患の増加は予想できない」は当てにできない。

アゴラは池田信夫らが運営するサイトで原発推進派である。
Wアリソン(2011年)「放射能と理性」などの著書を参考に放射能汚染の危険性がないことを訴えている。

もし、政府がSPEEDI(放射能影響予測)を活用し、福島を含む住民を1ヶ月でも非難させていたなら、チェルノブイリ報告と比べても低線量被曝対策のみであり、石井孝明の「福島に朗報」という言葉を使える。

しかし、政府は福島県民を避難させなかった。

野生の猪や家畜の牛や豚が放射能汚染されているように、そこに住む住民も汚染されてしまった。

低線量被爆と特定する一線が見えなくなってしまったのだ。

また、食品の安全も不安定なままである。高レベル放射能をはじき出す流通による全品検査を実施し、安全を担保しなければ、流通食品が汚染されているかどうかなど誰も知ることができない。

技術的な問題は解決済みだ。

後は、法的な問題と予算だけである。これは政府の仕事である。

一定レベルの安全、低線量被曝による被爆の危険性の軽減は、この処置がなされなければ成立しない。

<被害者を見捨てる。Wアリソンや池田信夫の意見は受け入れがたい>

実際、私もWアリソン派の論文に接したときに、わずかな希望を抱いたものである。

しかし、調べてみると内部被爆に関する論文が少ないこと。

不特定被害者のカウントを省くなど、放射線被害者のみを対象としていることが判った。つまり、放射能が原因と特定できない被害者は放射能被爆舎と認定されないのである。そのように被害者を減らして逝けば、数字的には被害者はいなくなる。しかし、被害者がなくなる訳ではない。

体の調子が悪い。

目眩がする。

集中力が無くなる。

すぐに息切れを起こす。

などなどの不特定の放射能障害者は救われないことになってしまう。

放射能被害者と特定できる人間だけを放射能被害者とする彼らの考え方を認める訳にはいかない。

残念ながら、Wアリソン派の考え方を基本にすると、救われるべき人が救われないことになり、石井孝明のいうように「福島に朗報」とはいかない。

放射能やストレスが原因で病気が併発する可能性を考えれば、

すべての体調不良や病気が放射能との因果関係があると考えるべきであろう。

そして、最終的には統計学的に影響を考えるしかない。

政府は医療費の負担を心配しているようだが、それほど最悪の状態になってしまったという自覚がなさ過ぎる。

第2、第3の福島原発事故の為に、調査と治療は決して無駄にならない。

世界中にいった幾つの原発はあるかご存じだろう。

原発事故は再び起る。

もし、染色体に異常が起り繁殖力を失った場合、人類は消滅する。

冗談の話ではない。

食卓の出て来るゴーヤは、ウリミバエ問題が解決するまで内地に輸入を禁止されていた。

ウリミバエにコバルト放射線を当て、ハエを不妊化に成功して根絶に成功した。

ほ乳類は昆虫より大きな抵抗力を持っている。

ゆえに、すぐに現実のものとなり得ないが、どこにその見えざる脅威の境界線があるのかを知るすべはない。

Wアリソンが言う100mSv/月まで大丈夫という言葉に、そのような脅威は想定外であろう。

私もWアリソンの言葉にわずかばかりの希望を抱いているが、今の時点で“朗報”という言葉は使わない方がいい。

そして、原子力委員会が考えている放射能被爆の被害者を被爆量で、被爆者と非被爆者に分類するものも止めた方がいい。

放射能は低線量でも被爆することがあり、

放射能は高線量でも被爆しないことがある。

理論的に考えることは重要だが理論にそぐわないと言って、現実から目を背けないでもらいたい。

Wアリソン派は、チェルノブイリの被害者を放射能被害者とそれ以外に分けて考えているように思われるので認める訳にはいかない。

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福島に朗報、「甲状腺疾患の増加は予想できない」ロシア専門家=チェルノブイリ報告から考える合理的な低線量被曝対策 - 石井 孝明
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120107-00000302-agora-sci
アゴラ 1月7日(土)10時34分配信
■巨大な社会コストと釣り合わない放射能リスク

前回『放射能対策、「健康被害極小」から「事故被害減少」へ政策の転換が必要』という記事には賛否両論の多くの意見をいただいた。

内容をまとめると、以下の通りだ。

▼放射線は年100ミリシーベルト(mSv)以下を緩やかに浴びたとしても被ばくと発がんなどの健康被害の証拠が得られない。被害の可能性は少ない。
▼福島原発事故では、福島と東日本の放射線量では、健康被害の可能性は少ない。
▼福島事故ではこれまで1人も死者がいない。これからも健康被害の可能性は極小である。それなのに推定で4兆円以上も東京電力が支払い、避難や混乱などの社会コストも発生した。この負担は妥当なのか。

今回のコラムはその主張を補強する情報を追加したい。1986年のチェルノブイリ事故の教訓だ。
広島と長崎の原爆投下の被害者のデータは蓄積されている。原爆の被害の中心は火と熱だった。また爆心地近くの瞬間最大1000mSv前後の急性被曝も放射線による健康被害をもたらした。しかし低線量での長期間の被曝では200mSv未満で、長期観察を経ても健康被害があるとは明確になっていない。[1]

しかし原爆よりも福島の原発事故の参考になるのは1986年に起こった旧ソ連のウクライナのチェルノブイリ事故だ。ただし福島の放射性物質の大気中への拡散量はチェルノブイリの10分の1以下と推定され、原子炉も大きく破損はしていない。

■ロシア専門家「チェルノブイリ付近で特別の疾患の増加は観察されていない」

チェルノブイリ事故についてIEA(国際エネルギー機関)など8国際機関とロシア、ベラルーシ、ウクライナ3カ国の報告書(2006年)[2]、ならびに国連科学委員会放射線部会の報告書(2008年)[3]のポイントは以下の通りだ。

▼急性被曝による死者は50人以下。

▼甲状腺疾がんの発症者は被災地居住者約500万人のうち4000人程度。そのうち死者は0.2%程度。発症率は他地域比で10倍と推定され、15歳以下の児童が多い。原因は事故直後に汚染された食物、特にミルクや乳製品によるものだ。

▼同地域はソ連邦崩壊の社会混乱にも直面し、寿命の短縮などの健康被害があった。それもあって放射線による健康被害の全体像は明確ではない。ただし結論としては、「放射線医学の観点からみると、ほとんどの人々が、将来の健康について概して明るい見通しを持てるだろう」(国連報告)という。

また内閣府は「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」で内外の専門家の知見を集めた。ちなみに、この報告は低線量被曝に関することを学びたい人には参考になるので参照いただきたい。

そこでチェルノブイリ事故の放射能対策に関わり、福島も視察したロシア科学アカデミーのミハイル・ロバノフ氏がコメントを寄せている。同氏は事故後の福島にも滞在した。[4]

以下抜粋する。
「チェルノブイリの損害のほとんどが、1986年5月に、汚染された地域で生成された、放射性ヨウ素を含んだミルクを飲んだ子どもの高い甲状腺癌発生率に帰着しました」

「福島では、 子どもが2011年 3月から4月にかけて、放射性物質を含むミルクを飲まなかったことにより、この種の放射線被ばくは非常に小さかったといえます。このため、近い将来あるいは、遠い将来、どんな甲状腺疾患の増加も予想できません」

「チェルノブイリ周辺の放射性セシウムに晒された地域の居住者の長期被ばくがどのような影響を与えたかについて、25年間にわたる細心の医学的経過観察および科学研究は、ブリャンスク地域の人口における特別の疾患の増加を示しませんでした」

こうした各種の専門家による情報を見ると、チェルノブイリでは低線量被曝による健康被害が大規模に発生していないという事実が分かる。これは福島に、とてもよいニュースだ。(なぜか日本のメディアは伝えていない。資料読み込みと勉強の不足だろう)

そして、チェルノブイリで行われたように放射線量の監視、さらには高線量地域の除染によって、少ないリスクをさらに減らすことができる。

■事故後の混乱は福島とチェルノブイリで共通

 社会の動きもチェルノブイリ事故は参考になる。この事故では人々の健康における最大の脅威は、恐怖と不確実性と強制移住だった。一連の出来事が相互に絡み合い、精神的に人々に悪影響を与えてしまったことが各種報告で指摘されている。

福島では同じことが起こっている。健康被害はこれまで発生していないし、仮に何もしなくても起こる可能性は少ない。それよりも政府指示による10万人の強制移住、福島をめぐる風説・デマ、社会混乱の影響が、負担となって社会と個人に加わっている。

もちろん事故を起こした東京電力が問題でまず批判を受けるべきだ。しかし事故後の政府の対応の是非も問題にされなければならない。ICPRの被曝規制(年間被曝量平時1mSv、緊急時20-100mSv)の規制は「厳しすぎる」という批判が事故前から専門家に広がっている。それを日本政府は機械的に適用して社会と国民に負担を加えた。この対応に問題はなかっただろうか。

一例だが、日本政府の放射能セシウムの規制値まで汚染された肉を食べて、CTスキャン1回分の被曝をするには、およそ4ヶ月の間に1トンの肉を食べなくてはならない。仮に食べても放射線による健康被害の可能性は少ない。ばからしい規制だ。こうしたことがたくさんあり、社会全体、そして福島に規制を加えている。

また一部の人々は、恐怖にかられ、社会に混乱をさせなかっただろうか。ありえない健康被害の恐怖を騒ぎ続ける人が今でも散見される。こうした不安は社会的コストになるだけではなく、自分と家族、子供も不幸にするだけだろう。騒いでも問題は何も解決しない。

私の低線量被曝をめぐる主張は簡単に要約できる。「ばかばかしい行動はやめて社会を平常に戻そう」というものだ。

この主張は今の日本では残念ながら少数派だし、政策課題で検討されることはないだろう。私の力も乏しい。しかし微力だが訴え続けたい。そして読まれた方は、現状では健康被害の可能性は極めて少ないという事実と、進行する社会の混乱を見比べて、「この騒ぎは何の意味があるのか」と問い直してほしい。

[1]Wアリソン(2011年)「放射能と理性」徳間書店 6章
[2]IAEA(国際原子力機関)など(2006年)チェルノブイリの遺産(概要の日本語訳)
[3]UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)(2008年)チェルノブイリ事故についての放射線の影響評価(要旨の日本語訳)
[4]同委員会 海外の専門家から寄せられたメッセージ

石井孝明 経済・環境ジャーナリスト ishii.takaaki1@gmail.com

(石井 孝明)

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