TPPは必要か? 韓国のFTAに習えば、『平成の開国』とはよく言ったものだ。
菅直人がTPPを『平成の開国』と命名した。
本人自身は坂本龍馬の気分なのだろうが、ペリー来航に腰を抜かした首席老中阿部正弘というのが正しい判断だ。
得てして妙、とはこういうことを言うのであろう。
菅直人自身は明治維新を意識して言っているのだが、ペリー来航は日本の動乱期の始まりであり、欧米諸国から不当な圧力を強制された最初の第一歩である。
つまり、「米国の脅威が始まったぞ」と菅直人は叫んでいたのである。本人の意識とは関係なく、的確な表現であったのはなんという偶然であろうか。
アメリカは日本に不平等条約を望んでいるのだ。
今回は日本より先に開国した韓国に学ぼう。
《韓国のFTA》
韓国のFTA(自由貿易協定 じゆうぼうえききょうてい)の内容は主に以下の通りである。
01.サービス市場は記載した例外以外全面開放
02.牛肉はいかなる場合であっても輸入禁止処置は行わない
03.他の国とFTAを結んだら、そのFTAの有利な条件をアメリカにも与える(互恵待遇)
04.自動車の売上下がったらアメリカのみ関税復活出来る
05.韓国の政策で損害を出したら米国で裁判する
06.アメリカ企業が思うように利益を得られなかったらアメリカ政府が韓国を提訴する
07.韓国が規制の証明をできないなら市場開放の追加措置
08.米国企業にはアメリカの法律を適用する
09.韓国はアメリカに知的財産権の管理を委託する
10.公企業を民営化
本来、国家が持っている関税を撤廃し、貿易に自由化を図るのがFTAの最大の狙いだ。しかし、中身は不平等条約そのものである。北朝鮮が中国・ロシアの後ろ盾がなければ国家の存続が危ぶまれるように、韓国は経済的な弱者国である。
内需産業によって国家を支えられない以上、海外との貿易が国家の存亡に直結する。
韓国は多額の債務をアメリカや世界経済より借り入れている国家であり、貿易の維持に躍起となっている。
韓国はその他にも、韓・欧州自由貿易連合(EFTA)FTA、韓国・チリ自由貿易協定、韓国・シンガポール自由貿易協定も結んでいる。
(2006年9月、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインから構成された欧州自由貿易連合(EFTA)とのFTAを締結した。)
これで韓国は欧州自由貿易連合(EFTA)、チリ、シンガポールに続き、米国とも結んだことになる。
貿易を維持し、価格の安い商品を各国に売る。
その為には、国内の内需を無視しても構わないという潔い決断である。しかし、切り離される方は堪ったものではないだろう。およそ、国内不安を抱えた韓国が何によって国内不満(フラストレーション)を緩和するかは、日本としては問題を抱えている。
《日本のTPP》
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、2つの側面を持っている。
・第2開国を迫る米国の不平等条約
・世界の支流ブロック化
日本と韓国はまったく異なる性質を持つ国家である。
第1に、経済規模の違いである。米国は韓国とFTAを結んでも生産量が拡充する余地はあまりまない。一方、日本は巨大なマーケットであり、日本への自由貿易は米国のGDPを大きく跳ね上げる可能が残されている。韓国とのFTA締結の裏に隠されている意図は、日本を世界の孤児、電車に乗り遅れた偉人と想わせることにある。
日本の資産は未だに世界から狙われているのである。
軍事的弱者である日本ではあるが、経済的には先進主要国の一員である。日本が債務を引き受けないと世界は忽ちに行き詰まってしまう。現に政府は400兆円の外貨建て対外債務を保有している。つまり、日本政府の借金の内、半分が海外へ貸し出したものとなる。借り手としては、日本が潰れて借金は棒引きされることを望むのは当然のことだ。
これだけお金を大量に貸し出しているのだから、さぞ借り手国は感謝しているだろうと考えているだろうが、それは大きな間違いである。
確かに、借りた直後は感謝しているが、返済が迫るにつれ憎悪の対象になってゆく。
借りたものを返すのは当たり前という善意は存在しない。金貸しが好かれるというロジックを期待しない方が良い。
さて、この前置きを前提に話しをTPPに戻そう。
米国が第2の『平成の開国』を望んでいる。これに対して日本ははっきりとNOと言うべきであろう。米国は国内問題を解決する為に、日本の資産を奪い取ることを目的としている。中国は軍事的に脅迫するのは難しい。しかし、日本は脅迫しやすい国である。日本の資産をすべて米国に渡せという条約に可決する必要などどこにもない。米国を追い詰める必要も、また、対立する必要もない。しかし、日本は経済的に米国に金を貸している立場であり、経済的には日本の方が強者であるという自覚をも持たなければならない。
金貸しらしい悪びれたところも見せる必要があるということだ。それでいて、米国が困窮しないように米国債を買うなどの米国救済を同時に行なう。二極対立するようではあるが、同盟関係である以上、この動きは一連の動きなのである。
TPPへの参加は賛成である。
但し、
・農業への補助政策は米国と同様に許可すること。
・TPPの条約は国内法の下流に位置すること。
つまり、国内で問題が起きた場合、国内法が優先されるという名文をいれることが大切である。基本的に自由化するが、問題がある部分は国内法を変えて対応できることが絶対条件である。
しかし、それこそが米国の狙うターゲットである。
企業訴訟や貿易問題を、日本で起こしながら米国の裁判所が判断するなどという事態を避ける必要がある。TPPの条約が日本の国内法より風上に置かれることだけは避けねばならない。TPPへの参加が絶対条件なのは日本ではなく、米国の方にある。日本は絶対的有利な立場で参加できるのである。
《TPPへの参加は絶対条件ではない》
TPPは世界のブロック化への兆候であり、この流れに乗らないのは国家の存亡を左右するというのは大げさな話ではない。
しかし、誤解してもらいたくない。
TPPへの参加は日本が望むものであり、米国やその他の諸国は如何に有利に進めるかということに躍起になっている。
日本は絶対的に有利な条件を提示していい国家なのである。
米国やその他の諸国は、「日本への自由チケットを如何にして手に入れるか」を考えているのであり、「不利な条件なら参加しない」とはっきり言えばいいのである。
最初は恫喝してくると思われる。
しかし、それでも拒否すれば、今度は好条件の提示がなされるハズである。
日本の参加は、そのタイミングで行なえばよいと考えている。
何故、TPPやFTA交渉が日本が立ち後れるのだろう。
それは日本が金貸しという最重要国家だからである。金を借りている方が強気に出るのは中々難しいからである。
米国がそれをできるのは軍事的に優位だからであり、経済的に優位な日本とは対等の関係を構築できる良い機会が巡ってきている。
この機会を最大限に利用しない手はない。
もう1度言おう。
TPPへは、条件を提示して参加するのが最適である。
条件が飲めないのなら不参加。
米国やその他の諸国は、日本が参加しなければ、メリットは小さくなる。
彼らは日本と自由貿易できる権利を得るために、日本が提示する条件を飲まなければならない。
日本はTPPに不参加であっても大きな損害はない。
《アメリカの報復は怖くない》
先日、米国トヨタの不買運動があったように、日本は米国に対して現地生産を主に行なっている。不買運動はアメリカ市民への直接雇用を奪うだけであり、何らメリットとする所がなかった。
日本の海外輸出は、
中国19.4%
米国15.4%
韓国 8.1%
台湾 6.8%
タイ 4.4%
その他40.4%
と米国以外で84.6%を占めている。つまり、米国が対抗処置に訴えても影響は15.4%に留まる。しかし、米国債の引き受けてを失った米国は国債が暴落し、国内経済の不安が爆発してしまう。つまり、米国が経済的な対抗処置はすでにできなくなっている。
経済的な米国の脅威はなくなっている。
スーパー401条(日米通称制裁)は、過去のモノだ。
むしろ、知的財産を保護する為にも、日米は協力関係でなければならない。
恐喝に屈しない。
アメリカを救えるのは日本しかいない。EUは自国のことで手一杯だ。
アメリカを支えるのも日本しかない。赤字国の米国、黒字国の日本。
日本を守るアメリカ。総合軍事力を持たない日本、軍事大国のアメリカ。
幸か不幸かは計り知れませんが、日本とアメリカが喧嘩をしていては第3国が喜ぶばかりです。
米国政府は日本を侮り過ぎていますし、
日本政府(政治家・官僚)はへりくだり過ぎです。
《民主党では、モノが言えない》
日本の官僚は日本の国益を考えません。
民衆党議員は、モノが考えられません。
前原氏も、枝野氏も、何を持って参加の条件としているのでしょうか?
恫喝に屈していますね。
TPPをどう利用するかの議論をせずに、米国の顔色ばかり見ています。
これでは、交渉などできません。
見送るが正解でしょう。
さらに恫喝してくるでしょうが、TPPに日本が参加しなくて困るのは米国です。日本は困りません。
円高を放置していますので、企業はTPPに関係なく海外へ拠点を移すでしょう。
仮に、シンガポール、ベトナムに拠点を移せば、TPPのメリットが享受できますので問題はありません。
現在の条件でTPPに参加すれば、日本はアメリカのように内需の空洞化を促進するだけです。
好条件が揃うまで、黙って待っていれば、相手から好条件を提示してきます。
今回、TPPは見送りが最適でしょう。
経済が判る政治家、官僚を育てるのが急務です。
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