稲ワラ、放射能汚染牛で見捨てられる畜産業者 汚染疑い牛2700頭超、畜産家はどこへ行けばいいのか?
消費者心理と畜産家の現状を考えないで、机上計算しかしない農林水産省は新しい対策を26日を発表した。
“東京電力への賠償請求を前提に、汚染が暫定規制値を超えた肉は業界団体が買い取るほか、資金繰りにあえぐ農家には1頭当たり5万円を支給。”ということだ。
しかし、これは現実的な対策にならない。
現在の検査方法では、全頭検査を終えるのに何カ月待ちになりそうな状態であり、いつ出荷できるか全く想定できない状態である。「1頭当たり5万円を支給するから待ってなさい」と言われても“はいそうですか”と答える畜産家はいないだろう。
また、放射能汚染牛と非放射能汚染牛の比較対象ができない状態を放置していることは、一般消費者に自主避難を促しいているようなものであり、つまりは“和牛を買うな!”と政府が奨励しているようなものだ。
放射能汚染牛と非放射能汚染牛の区別がつかない消費者がロシアンルーレットを強制されているのだから、買わないという選択を選ぶのは『風評被害』でもなんでもない。
販売している業者も、生産してる畜産家も“たぶん大丈夫”と言っているだけで、放射能汚染牛を出荷してしまった畜産家も「まさか稲ワラが汚染されていたなんて」と発表されるまで自家産牛を汚染牛と思っていなかった訳だ。
『風評被害』で売れなくなったのではなく当然の反応である。
汚染疑い牛2700頭超を流通から外し、全頭検査をすることを発表しなければ、市場は落ち着きを取り戻せないだろう。
しかし、通常の検査では間に合わない。
検査体制を強化するのは当然として、
間に合わせの暫定処置が必要である。
別に難しいものではない。簡易検査機を支給し、流通過程で一時的なチェックを入れるのだ。
畜産業ならば、解体と出荷のダブルチェックで相当数の確認が取れるだろう。
簡易検査機と言っても数を購入すれば、相当な金額になる。
その購入費を政府・自治体が持つことにすれば、1~2週間で検査体制が整えることができるだろう。
チェックに掛った流通対象は本検査に回し、その肉は検査待ちとすれば、ほとんどの放射能汚染牛をシャットアウトできると考えられる。
つまり、
政府は考えなければならないのは、消費者への安心感である。
すべてチェックしたとなれば、和牛への危機感が薄れ、畜産家への被害を減少する。
今、政府は何をするべきかお判り頂けただろうか?
5万円を支給するという場当たり的な対応では、無傷の畜産家を見捨てることになる。汚染牛を持つ畜産家は放射能被害者として救済するが、その他の畜産業者は採算に乗らない営業で廃業に追いやられ、国産牛は汚染牛を持つ畜産家しか残らないという珍現象になりかねない奇妙な対策である。
国産の畜産家を救うのであれば、
簡易検査でいいので、全頭検査を実施するしかないのだ。
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汚染疑い牛2700頭超 秋田など3県が全頭検査へ
http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011072501001130.html
放射性セシウムを含む稲わらが肉牛に与えられていた問題で、新たに栃木、茨城県産のわらから国の暫定基準値を超えるセシウムが検出されたことが25日、両県の調べで分かった。
同日判明した汚染の疑いがある肉牛は福島、群馬、岐阜3県で計約140頭で、共同通信のまとめで46都道府県に出荷・流通した頭数は2700頭超になった。秋田、山形、新潟の3県が全頭検査することを表明。宮城県も国の体制が整備されれば、検査に踏み切る意向だ。
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東日本大震災:汚染牛問題 「畜産続けられない」 政府救済策に農家不満
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110727ddm041040086000c.html
牛肉の放射性セシウム汚染による畜産、食肉業界への影響が深刻化する中、農林水産省は26日、ようやく救済策を打ち出した。東京電力への賠償請求を前提に、汚染が暫定規制値を超えた肉は業界団体が買い取るほか、資金繰りにあえぐ農家には1頭当たり5万円を支給。だが、汚染や風評被害に苦しむ生産地からは「全頭検査が必要」「5万円では足りない」などの訴えが相次いでいる。【野倉恵、浅野翔太郎、和田明美、吉永康朗】
「うちの牛が出せなくなった」。JAグループ福島肉牛振興協議会の鈴木広直会長(福島県大玉村)は25日、仲間の農家から連絡を受けた。出荷停止で牛舎に留め置いていた牛が死んだという。出荷時期を迎えた牛が猛暑でビタミン不足などに陥ると命にかかわる。「案じていたことが現実になり始めた」
鈴木会長が営む牛舎では、餌や飲み水などの維持費が月1頭2万2000円。出荷最適期が近い牛にはビタミン注射も打ってもらったが、出荷制限が解除されても肉質が落ちて値が下がる心配がある。1頭5万円の支給では「先の見通しが立たない」という。
約300頭を育てる福島県古殿町の青柳浩さん(54)も1頭5万円の支給額を聞き「来月の餌代も払えない状況なので助かるが、これまでの損失には全然足りず、畜産を続けていけない」と嘆く。1頭の子牛を買い肉牛として出荷するまでには70万円近くかかる。しかしこのままでは出荷できても20万円程度しか値がつかないとみる。「とにかく物事を早く決め、実行してほしい」
自治体の担当者も対策に納得していない。福島県畜産課は「国策として推進してきた原発による被害ではないか」と、買い取りが暫定規制値を超えた肉に限られることを批判。山形県農林水産部も「全頭検査して、汚染が判明した牛肉も買い取ってほしい」と訴え、1頭5万円の支給額は「1頭平均20万~30万円も価格が下落しており十分とはいえない」と指摘する。宮城県畜産課は全頭検査体制の構築や、汚染された稲わらの処分も、国が責任を持って進めてほしいと注文した。
生産団体からは、風評被害を払拭(ふっしょく)する取り組みを求める声が上がった。暫定規制値以下の肉を冷凍保管する対策について、JA全農福島の担当者は「消費者の安心感が得られない限り、ずっと保管しなければならない。なぜ規制値以下ならば安心なのか、消費者に分かりやすく説明してほしい」。JA山形おきたま米沢牛振興部会会長の山形県米沢市六郷町、森谷英一さん(58)も「暫定規制値以下の牛肉には保証がなく、消費者も買い控えている。何よりも早く原発事故を収束させてほしい」と訴える。
毎日新聞 2011年7月27日 東京朝刊
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