ホワイトリスト
今話題の東京スカイツリー、所謂電波塔である。自立式電波塔としては世界一の高さとなる634.0mを目指して建設中だ。・・・といっても、ブルジュ・ドバイ(ドバイタワー)は全高828mであり、ビルより低いタワーである。しかし、3万6000kmの静止軌道には遥かに及ばない。
東京タワーが電波塔として役目を終えたと言われるのは単に電波が届かなくなってきたからだ。そもそも巨大な電波塔が必要だろうか?
ブローバンド化した日本において、殆どの家庭に電話が設置されている。さらに中継塔を駆使すれば、ほとんど家庭をカバーできる。巨大な電波塔はすでに無用の長物である。
さらに、ホワイトリストが存在する。
ホワイトリストというのは、電波塔などでもカバーできない地域を衛星を使って番組を放送するシステムである。ほとんどの地域はプロテクトが掛っているので見ることができない。こんな便利機能が衛星にあるのなら、すべて衛星で放送すればいいのではないか?
その通りである。
池田氏がいうように、「通信衛星でやれば200億円ですむデジタル放送を1兆円以上かけてやるのは狂気の沙汰だ」と政府内でも言われていたらしい。しかし、結果は現在に至る。
地方の放送局はアンテナ設置に大迷惑だ。“いったいいくら掛ると思っているのだ。総務省は何を考えている。”と当時は激怒したものだが、内実は少し違う。民放連に加盟している127社のうち、100社以上が地方局の反対によって消えていったらしい。プロテクトを掛けることで既存チャンネルを守ることはできる。127社が番組を争ってもいい。グリーンチャンネルのように別途料金を徴収する方法も考えられる。それらの利点を殆ど消して、1兆円以上の金が無駄に使われたのである。
1兆円の予算があれば、電波関係でどれだけのことができるか判らないが、電波塔を作るよりは有意義だと思える。
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(参考)
衛星放送でカバーできるなら最初から地上波はいらない
http://ascii.jp/elem/000/000/508/508367/
2011年7月24日にアナログ放送が終了する日まで、あと500日を切った。しかし地上デジタル受信機の普及台数は、今年2月現在で約7000万台(NHK調べ)。全国に1億3000万台以上あるといわれるテレビの半分強だ。世帯ベースの普及率では、70%前後と推定され、あと500日足らずで残る1500万世帯をすべて「地デジ化」することは不可能である。
そこでテレビ局は今月11日、難視聴地域を対象にした衛星放送を開始した。対象地域はホワイトリストとして総務省のウェブサイトでが公開され、この地域以外では、放送にはスクランブルがかけられて視聴できない。放送内容もアナログと同じ標準解像度(SDTV)である。
このニュースを見て、Twitterで私に「衛星で全部カバーできるなら、なぜ最初から衛星でやらなかったんですか?」という質問が来た。もっともな疑問である。通信衛星ならもっと多くのチャンネルが空いているので、地デジと同じデジタルハイビジョンで放送できる。スクランブルなどをかけないで、全国どこでも見えるようにすれば、年間ほとんど数億円でデジタル放送ができてしまう。
実はこれは欧州のデジタル放送の方式であり、地デジの計画が始まる前から(私を含めて)多くの専門家が提案したことだ。郵政省(当時)でも、放送行政局の課長が「通信衛星でやれば200億円ですむデジタル放送を1兆円以上かけてやるのは狂気の沙汰だ」と省内で反対し、左遷された。
地デジの周波数を削減して携帯に割り当てよ
衛星によるデジタル化は、技術的に合理的であるがゆえに、政治的には不可能である。衛星で全国をカバーすれば、在京キー局の番組を垂れ流して「電波料」をもらっている地方民放局のビジネスが成り立たなくなるからだ。民放連に加盟している127社のうち、100社以上が地方局だから、彼らの意見は圧倒的に強い。売り上げでは東名阪の20局で7割以上を占めるのだが、国連で小国の意見が通りやすいのと同じだ。
民放連が衛星デジタル放送に反対する理由は「全国一律でローカルサービスができない」ということだが、アメリカではローカル局が通信衛星のチャンネルで独自放送を行なっている。県内に中継局を張りめぐらすコストより安いからだ。そもそもアメリカでは、視聴者の9割はケーブルテレビで見ているので、先週も紹介した全米ブロードバンド計画のように、地上波への電波割り当てを減らすべきだという意見も多い。
日本では、今のペースでいくと来年7月の段階で少なくとも500万世帯以上の家庭で突然、テレビが消え、パニックになるだろう。それに対して100億円以上の税金を投入してチューナーを配る計画も進められているが、これと衛星放送は重複している。最初からデジタル化は衛星でやればよかったのである。
実質的に7チャンネルしかないテレビのために240MHzもの帯域を占有し、数千万チャンネルの次世代携帯には40MHzという周波数割り当ても異常である。アメリカで提案されているように、SFNという中継技術を使えば、テレビ1チャンネルあたり6MHzですむので、最大50MHzもあれば十分だ。2012年以降、電波を再配置するとき、テレビの帯域を50MHzに減らし、次世代携帯に250MHz割り当てれば、日本は世界最先端のブロードバンド大国になるだろう。
BSに291~298チャンネルという謎のチャンネルが増えた。ここを見ようとすると、「この放送は地デジ難視聴対策衛星放送です。一般の方は、ご利用できません」という字幕が出て、「ご案内チャンネル」をクリックすると、次のような画面が出てくる:
地上波でカバーできない2%の地域のために衛星デジタル放送を始めたのだが、残りの98%の地域に放送が流れると地元のローカル民放の既得権をおかすため、ホワイトリスト(難視聴世帯)以外への放送にはスクランブルをかけて、見えなくしているのだ。
こんなフタをしないで普通に衛星放送すれば、放送のデジタル化は数十億円でとっくに完了していた。それを地上波でやったため、1兆円以上のコストと10年の時間がかかり、2000億円以上の国費を投じて、それでも来年7月には500万世帯以上のテレビが「ブラックアウト」する。それを避けるには、FCCと同じように地デジ・チューナーのクーポンを配るしかないが、それにはまた数百億円の国費投入が必要だ。せめて地上波だけではなく、光ファイバーなどインフラを問わない「ブロードバンド・バウチャー」にしてはどうだろうか。
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