ロシアの危険な火遊び
経済力を手に入れたロシアは、かっての権威を取り戻そうと躍起になっている。
ソビエト崩壊はそれほど彼らの胸を傷つけたのだろう。
世界の半分を支配していた大国は世界の情けで国を救われたのだ。今日のパンが買えないひもじさは彼らの心をえぐったはずだ。
今、アメリカ・EUが経済的につまずいた事が、彼らの欲望をくすぐるのだろう。
経済的豊かさを手に入れたロシアは、EUにその影響力を示そうとしている。
不必要なEUの拡大路線に楔を打ったのだ。
グルジア侵攻とはそういう意味を持っている。
「ストップ!!EU」
東欧の諸国にロシアの存在を示す為の侵攻であったことは間違いない。
もちろん、EU拡大主義を推進したアメリカの政策ミスは否めない。
しかし、ロシアは今だグルジアから撤退していない。
EUの権威をここで失墜させる狙いがあるからだ。
アメリカ・EU VS ロシア
という戦争を望んでいる訳ではない。流石にこの戦争は分が悪いことはロシアがよく知っている。ここで問題なのは、EUが1つの独立した国家でないという点である。EUとロシアが対立したとき、より大きい被害を受ける国家とそうでない国家が存在する。より大きい被害を受ける国家はそれを回避したい。特にエネルギー関係を依存している国家はパイプラインの蛇口を閉まられるのを嫌がる。
相対的に見れば、EUという大口の販売先を失うロシアはその繁栄を失う。しかし、その前にEUの現政権は民衆によって降ろされることになる。現政権にとってはそれほど恐ろしいことはない。ロシアとの妥協点を見つけて、対立関係にならないように図りたいと考えるのだ。そうするとEUの足並みが崩れる。
そう見越した上で、ロシアはグルジアからの撤退を渋っているのだ。
ロシアにとって有利な条件を引き出した後に撤退することになるだろう。
しかし、それはとても危険な賭けである。
特に、東欧の諸国はロシア派と反ロシア派によって分裂する危機が起こる。当然、西側はそれを黙認できない。一触即発の危機が各地に起こる可能性があるのだ。
また、西側に対ロシアという危機感を持たせることになった。この危機感から十分な軍事力を再び整え始めることになるだろう。
それに呼応して、ロシア自身も相当な軍事費が必要になってくるからだ。
かっての旧ロシア帝国、ソ連は豊かな海や陸を求めて拡大主義を続けていた。
しかし、温暖化によって北極の海が開かれ、技術革新によって北の大地は開拓可能な大地へと変化した。
そうである。
ロシアは急ぐ必要はなかった。
豊富な天然資源と世界最大の食料輸出国になってからでも遅くなかった。
世界経済は崩壊しつつある。
新しい覇者を必要としていた。ロシアはその権利を持っていたのだ。エネルギーと食料の市場を独占してからでも遅くなかった。そうすれば、ソビエトが崩壊した後、アメリカを覇者として世界中が認めたように、アメリカの崩壊後、ロシアは覇者として担がれていただろう。
世界は赤い色を欲しいているように私には思える。
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